コンセプトエール

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コンセプトがなくても商品が売れるのは賃貸不動産業界だけ?!

投稿日:2019年7月16日 更新日:

市場に流通している商品やサービス、競争の激しい飲食店などには当たり前のように
コンセプトがありますが、ほとんどの賃貸物件にはありません。
そのことを不思議に思ったことはないでしょうか?
今回はその“謎”について考えてみたいと思います。
オーナーさんが所有されている賃貸物件にはコンセプトがありますか?

> 募集図面のキャッチフレーズはありきたり

賃貸物件の募集図面に記載されているキャッチフレーズを見くらべたことがあるだろうか?

なければ一度意識してご覧になっていただきたい。

「南向き」「日当たり良好」「角部屋」「全室フローリング」「二面採光」「リノベーション工事実施済」「オートロック」など建物や部屋の良さをうたったもの、「駅近」「閑静な住宅街」「スーパー・コンビニすぐ近く」など立地の良さをうたったものなどが並ぶが、正直どれも代わり映えしないことに気づくだろう。

お部屋探しをしておられる方たちが見たら、平凡すぎて、スルーしてしまうのではないだろうか?

それに比べたら、他の業種はかなり違うように思う。

たとえばネットで居酒屋を探すと、「京をイメージした大人の個室」「九州焼酎を中心にした飲み放題メニュー」「北京ダック&大海老料理付きで2時間飲み放題」「話題の極上肉寿司とみぞれしゃぶしゃぶ!」「全席個室。和の伝統とモダニズムが融和した空間で、プレミアムなひとときを」など他店との違いを一生懸命PRしていることがわかる。

どの文言も個性的で、ありきたりなものがない。

おそらく、個性がないお店はすぐに消えていってしまうから、自然とそういうことになっているのかもしれない。

ほかの業種も例外ではない。

家電量販店に行けば、扱っている商品はテレビでも洗濯機でもパソコンでも、他と比較してどこがどう違うのか、きちんと表現している。

書店に並ぶたくさんの本たちも、キャッチフレーズを競い合っている。

どうにかして自社の商品に注目してもらおうと皆、必死だ。

> コンセプトがないからキャッチフレーズがつくれない

それではなぜ賃貸不動産の募集図面には、ありきたりのキャッチフレーズしか並んでいないのだろうか?

その理由は至って簡単で、物件ごとに「コンセプト」や「個性」がないからだ。

語るべきコンセプトがないのだから、目を引くキャッチフレーズなどつくれようはずがない。

いやいや「角部屋」だって「日当たり良好」だって立派なPRポイントじゃないか、と言う方もおられるかもしれない。

確かにPRポイントだとは思うけれど、先の居酒屋の例にくらべたら、あまりに地味で没個性だと感じないだろうか?

では「なぜ賃貸物件にコンセプトがないか?」と問われたら、諸説あるだろうが、私は「コンセプトがなくても売れる(借りてくれる)時代が長く続いたから」だと思っている。

お部屋を借りたい方を「需要」、賃貸物件を「供給」と表現すると、長い間、需要が供給を上回ってきた。賃貸物件(商品)があれば、誰かが必ず借りてくれたので、コンセプトをつくる必要がなかった。差別化を図る必要がなかった。

考えてみてほしい。

街に居酒屋が1軒しかなく、どうしても外でお酒を飲みたかったら、街の住民はその居酒屋に足を運ぶほかない。

本だって、人体の解剖を著した本が『解体新書』しかなかった時代なら、医学を志す者はこぞって『解体新書』を求めただろう。

競争がない分野の商品は没個性であっても構わない。

いや、その分野の商品であるというだけで十分立派な個性なのである。

これと同じ状況が賃貸不動産の世界では長く続いた。

それが大家さんにも不動産屋にもすっかりしみついてしまって、今や供給が需要を上回っている時代に突入しているというのに、そのことを深く受け止めていないのだ。

読者の皆さんは「ゆでガエル理論」という話を聞いたことがあるだろうか?

カエルはいきなり熱湯の中に入れるとびっくりして跳ね上がるが、水の中に入れておいて、少しずつ温度を上げていくと、変温動物であるゆえにその温度に慣れてしまって、とうとうゆで上がって死んでしまう。

これと同じように、人間もいきなり危機的な状態に見舞われれば大騒ぎするが、少しずつ環境が悪化していくと、それに順応してしまい、いつしかどうにも対処できない事態に追い込まれてしまうという話だ。

賃貸不動産業界はまさにこの「ゆでガエル」と同じで、需要が供給を大幅に上回り、大家さんが偉く、店子(たなこ)が弱い立場にある状況がずっと続いてきたため、コンセプトを持つなど考える必要もなかった。

そして今になって「空室対策」にてんやわんやするのだが、それでも商品が差別化されていないことの異常さには気づかないでいるのである。

> ターゲットを絞らない普通の物件が良いという声

さらに始末が悪いのは、一部の進んだ方が「差別化」という言葉を口にすると、それを非難する大家さんや不動産会社が現れることだ。

「差別化なんてとんでもない。万人受けする普通の物件が結局一番いいんだよ」と諭すように言われるのである。

コンセプトをつくって差別化を図ると、当然、入居者さんのターゲット像も絞られていくことになる。

たとえば「お姫様部屋」と銘打って、いかにも女性が喜びそうな内装の部屋をつくったとしよう。

そうすると普通の男性はその部屋を選択肢から外すので、世の中の人の半分を顧客対象から外してしまうことになる。

それはいかにも損でリスキーだというわけだ。

確かにコンセプトが際立っていて、一部の人には圧倒的に受け入れられるが、嫌う人もいっぱいいるという物件は顧客層が非常に狭くなる。

その層に属するお客様に出会えなければ売れる可能性はぐんと小さくなる。

それは間違いではないのだけれど、だからと言って顧客層が広い物件が有利に違いないとまで言えるのだろうか?

私は「需要過多の時代の遺物的考え」なのだと思っている。

> ラーメン屋を例に考える

先に「街に1軒しか居酒屋がなければ、その居酒屋に行くしかないので差別化の必要性がない」と書いた。

この話をラーメン屋に置き換えて考えてみよう。

私は以前、西新宿にある賃貸管理会社に勤務していたが、オフィスの前の通りは「ラーメンストリート」で有名店がたくさん建ち並んでいた。

その中には激辛で知られる「中本」もあった。真っ赤な背景に「中本」と筆書きされた看板が目を引く店だ。

「中本」のラーメンは確かに無茶苦茶辛いので、辛いものが苦手な人は絶対に近づかない。

誤って入店し、食べてしまったら、一口で逃げ出してしまうだろう。

しかし辛いものが大好きな人は長い行列に並んででも「中本」のラーメンを食べようとする。

顧客ターゲットを「辛いものが好きな人」に絞っていて、それをはっきり伝えるために、看板もいかにも辛そうな赤バックにしているのだという話を聞いたことがある。

この「中本」を代表に、ラーメンストリートには個性的な店がズラリと並んでいる。

ニンニクをたっぷり効かせたラーメン、魚介スープを極めたラーメンなどを出す店が激しい競争を続けている。

ラーメンそのものが好きな人は、辛いものが好きであれば「中本」に入るが、別の日はほかの人気店に足を運ぶ。

だから激戦区であっても、人気店は長続きしていけるのだろう。

この中に入って、とりたてて特長のないラーメンしか出せないお店は、やはり長続きできない。

たいがいは「安さ」「ボリューム」などを売りにするほかなくなるが、それだと新宿の高い家賃を払い続けるのは大変だ。

それがわかっているから、新規参入する店で個性がないラーメンを出すところはなくなる。

そして次々と際立ったコンセプトを持ったラーメン屋が登場し、ラーメンストリートはさらに賑わっていく。

> 普通の物件が直面するリスク

さてラーメン屋の話を賃貸不動産業界に置き換えたらどういうことになるだろうか?

普通の物件はとりたてて特長のないラーメンしか出せない店と同じだ。

そうなると、「駅からの近さ」、「家賃の安さ」、「設備の充実度」などの要素に勝る物件から選ばれていくようになるので、条件競争が激しくなっていく。

「うちの物件は駅から徒歩8分で、まあまあ近いほうだけれど、うちの物件に着く前に、賃貸マンションが10棟も並んでいる。だからそっちに空室が出ると、うちはどうしたって分が悪いんだよね」
などという話はよく耳にする。

「こちらは徒歩8分、敵は徒歩5分だったら、家賃を相手より3,000円ぐらい安くしたら勝てるんじゃないだろうか?」
と考え、値下げする。

すると敵も同じく3,000円下げてくるので、こちらはもっと下げて勝負する。

あるいはエアコン、シャワートイレ、オートロック、デジタルキー、オシャレな内装などで差をつけようと投資する。

けれど敵も同じく設備、内装をして商品を磨いてくるから、こちらはさらに上を狙わざるをえなくなり、投資額はどんどん嵩んでくる。

家賃収入=売上を減らすか、投資額=支出を増やすかしないと、空室を埋めていくことができなくなっていく。

これが普通の物件の末路だ。

何だかとてもストレスが多そうだし、儲からなさそうで、そのうちあきらめて、空室のままでもいいやと思う大家さんが増えていくのも不思議ではない。

私は大家さんや管理会社の人が「今年の引っ越しシーズンで決まらなかったから、また来年だな」と言っているのを何度も聞いたことがある。

空室であること、空室が長引くことに慣れてしまって、努力するのを放棄してしまうのだ。

それなのに「普通の物件が一番」と言われる。

それはもうゆでガエル以外の何物でもないのではないだろうか?

> まとめ~あなたの物件のコンセプトは何ですか?

今回のコラムのまとめです。

  • 募集図面を並べてみると、ありきたりなキャッチフレーズばかりであることに気づく。
  • 居酒屋のキャッチフレーズと比較すると、その差は歴然としている。
  • キャッチフレーズがつくれないのは、コンセプト、個性がないからだ。ないものはつくれなくて当然である。
  • コンセプトがない商品ばかりになっているのは、需要が供給を上回る時代が長く続き、大家さんも不動産会社もゆでガエルになってしまっているからではないだろうか。
  • 「普通の物件が一番いい」と言う大家さんや不動産会社の人がいる。その理屈は「顧客層を絞るのはリスキーだ」というものなのだが、本当にそうだろうか?
  • 繁華街のラーメン屋を例に考えると、際立ったコンセプト、個性がないと生き残っていけないでいる。需要が供給を上回っている時代で、ラーメン屋業界の話はよその世界のことだと思っているのは間違いだ。
  • 普通の物件は、家賃の安さ、設備の充実度を競うようになる。その結果、収入が減り、支出が増えるので、賃貸経営を続けるのはどんどん厳しくなっていく。
  • そしていつしか、空室を埋めることに疲れ、諦め、放置するようになる。そんな普通の物件の末路をたどっていっていいものだろうか?

何度でも言わせていただきますが、キャッチフレーズがつくれない商品、コンセプトや個性がない商品で売れてきたのは賃貸不動産ぐらいのものだと思います。

しかしそれも昔の話。

人口が減り、お部屋探しをする方が減ってきているのに、新築はどんどん建ち続け、賃貸物件はますます増えてきている時代にあって、普通の物件が生き残っていくことは困難です。

早くこの状態に気づいて、ご所有の物件のコンセプト、個性をつくり出していっていただきたいですし、これから新築をつくるのであれば、ハウスメーカーの言いなりになって、普通の物件をつくったらいけないと思います。

ハウスメーカーが普通の物件を勧めるのは、おそらくそれが楽だからです。

コンセプトのある物件づくりを提案したら、責任が伴うので、あえてリスクを背負いたくないと思うのは自然のことです。

しかしハウスメーカーはつくってしまったら終わりですが、建てたオーナーはそれからがスタート。

長い賃貸経営が始まるわけですが、そのときの没個性であることを悔やんでも遅いです。

すべてのオーナーさんに問います。

あなたの物件のコンセプトは何ですか?

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