コンセプトエール

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コンセプト賃貸物件の募集情報を顧客にどう届けるか?

投稿日:2019年6月2日 更新日:

楽しいコンセプト、社会的意義のあるコンセプトを打ち立て、苦労してつくりあげた物件なのに、借りてくださる方がなかなか現れないということがよくあります。
なぜそんな残念なことになってしまうのか、理由はいろいろあるでしょうが、そもそもコンセプト賃貸物件の募集情報がターゲットとなるお客様に届いていないことが最大の要因だと思っています。
「コンセプト賃貸には特有の募集図面が必要だ」と前回コラムでお伝えしましたが、募集方法も普通の物件とは異なり、特有の方法があります。
今回は、募集情報を伝える役割を担う管理会社の分析から始め、続けてコンセプト賃貸特有の募集方法まで説明したいと思います。

> 賃貸管理会社には2種類ある

一口に「不動産屋」と言うが、不動産屋にも得意分野、専門分野があり、それによって幾通りにも色分けができる。
自社で土地から仕入れてマンションや戸建てを分譲する会社、売買や賃貸の仲介業務を専らとする会社、貸地や賃貸物件の管理を中心に行う会社などがあり、全てに通じている不動産会社はごく一握り。中小規模の会社にはたいがい何かしらの専門分野がある。
このうち賃貸管理を行う会社にも、大きく分けて2つの種類(タイプ)があるのだが、そのことをよく知らない不動産オーナーが少なくないようだ。
タイプによって得手・不得手、長所・短所が当然あるので、これはよく理解しておくべき事柄である。その説明から始めよう。

賃貸管理会社は「仲介店舗兼業型管理会社」(以下「店舗兼業型」という)「賃貸管理(PM)専業型管理会社」(以下「PM専業型」という)とに大別できる。
店舗兼業型は賃貸仲介が収益の柱となっていて、PM業務も行っているというタイプ。
PM専業型は自社で仲介業務は行わず、PM業務のみ行っているタイプである。
それぞれに長所、短所があり、不動産オーナーはその利用目的に応じて店舗兼業型、PM専業型のいずれかを選べばよいのだが、実際はその違いが判らず(そもそも「違う」という認識すらなく)、「物件から近いから」とか、「スタッフが熱心で話が合うから」などという理由で管理会社を選んでしまうことが多いように思う。

今回は空室募集(リーシング)のお話に絞ってこの2つのタイプの違いを説明したい。

まず店舗兼業型だが、こちらはお店を構えていて、来店されたお客様に自社で管理している物件を中心に空室物件を紹介し、案内・契約を行っている。
PM専業型は、自社管理物件を直接お客様に紹介する機能は基本的に持っておらず、仲介店舗(※仲介のみ行う会社と、店舗兼業型管理会社とがある)にお客様付けを依頼している(「AD」「広告料」などという名目で賃料の1~数か月分の成約報酬を支払うことが多い)。

私はPM工房社という不動産会社も経営していて、ここでは当社がコンサルティングまたはプロデュースしたコンセプト賃貸物件の管理も行っているが、管理会社のタイプとしてはPM専業型に属している。
管理物件に空室が出たときは、仲介店舗に募集情報を行き渡らせ、お部屋探しをしている方がどの仲介店舗に行っても自社の空室物件を紹介してもらえるよう、さまざまな工夫をしている。

> 地域密着型仲介店舗とコンセプト賃貸物件の相性

リーシングにおいて店舗兼業型とPM専業型には長所・短所があるが、ことコンセプト賃貸物件のリーシングにおいてはPM専業型に分があると私は思っている。
とりわけ、地域密着タイプの店舗兼業型管理会社はコンセプト賃貸物件のリーシングには向いていないと思う。
なぜなら、コンセプトのターゲットとなるお客様が、その会社の営業エリア内に絞って探すことは稀だからだ。
たとえばネコを多頭数飼育して暮らすことを切望しているお客様がいたとする。
そのお客様にとって何より優先すべき事項はネコを多頭数飼育できることなので、その条件を満たす物件であれば、住むエリアは二の次である(通勤・通学圏内であればどこでもいいと考えておられる)。
よって、地域密着タイプの店舗兼業型管理会社が、このお客様と出会える可能性は極めて低いと言える(ネットで情報を広めればいいと思われるかもしれないが、それもなかなか難しいということは後述する)。

> 多店舗展開している店舗兼業型管理会社はどうか?

では多店舗展開している店舗兼業型管理会社はコンセプト賃貸物件のリーシングに適していると言えるだろうか?
さまざまなエリアの物件を扱うことができるので、コンセプトに合うお客様が紹介を受けられる可能性は高そうだが、これに対する答えは「微妙」である。
その理由は、どれだけ多店舗展開していても、数が限定的だと言わざるを得ないからだ。
たとえば東京都内に50店舗ある会社があるとする。50店舗といったらかなりの数には違いないが、東京都には2万社以上の不動産会社がある。だから50という数字は「氷山の一角」に過ぎず、コンセプトに合ったお客様と出会える確率はまだまだ低いと思う。
コンセプト賃貸物件のリーシングについて理想を言えば、「どの仲介店舗に行っても紹介してもらえる」ことが望ましい。
そのコンセプト賃貸物件を探しているお客様と物件情報とが出会える確率が飛躍的に高まるからだ。
たとえば私は以前「アンティーク家具付きの部屋」というコンセプトの賃貸物件を東京・神楽坂でプロデュースしたことがあるが、茨城県つくば市に住んでおられる方が神奈川県横浜市にある不動産会社に紹介されてその物件を見に来られ、成約したことがある。そのお客様はアンティークが大好きで、横浜市の不動産会社の担当者はお客様の友人でその好みをよく知っておられた。そこで神楽坂にできた新築マンションの情報を伝えたところ、強く関心を持たれ、完成直後に見に来てその場で入居申込みをされた。
これぐらい幅広く網を広げておくことが、コンセプト賃貸物件のリーシングの場合、望ましい。
それが50店舗ぐらいで成立するかどうかはやはり「微妙」だと思うのだ。

> PM専業型管理会社がコンセプト賃貸物件の募集に合う理由

一方、PM専業型管理会社は、普通の物件の場合でも仲介店舗に募集情報を行き渡らせ、お客様への紹介を依頼するのが常である。
レインズやマイソク、B to Bの情報サイト、メールやFAXによる広報、仲介業者訪問など、さまざまなツールを駆使して、自社の募集情報を仲介店舗に届けようと努めている会社が多い(※中には特定の数社にのみ仲介依頼をするPM専業型もあるので、注意が必要。それだと店舗兼業型と同じことである)。

ここで整理のために、図を使って詳しく説明しよう。

上図は私のPM工房社で店舗兼業型とPM専業型の入居者募集方法を比較説明するときに用いているものだ。
PM工房社の場合、オーナーから新規契約代行手数料として賃料の2ヵ月分を頂戴していて、そのうち1ヵ月分をお客様付けしてくださった仲介店舗に広告料(AD)等としてお支払いしている。
仲介店舗は、お部屋探しをされているお客様から仲介手数料として賃料の1ヵ月分をいただくので、PM工房社からの広告料(AD)と合わせて賃料の2ヵ月分が収入となる(お客様の仲介手数料を割引している仲介店舗もある)。
仲介店舗からすると、自社に管理を任せてくださっているオーナーの物件を成約させても、広告料(AD)は1ヵ月、PM工房社(PM専業型管理会社)から紹介された物件を成約させても広告料(AD)は1ヵ月なので、売上は同じである。
そのため、自社管理物件を優先させつつも、お客様にジャストフィットする物件がなかった場合はPM専業型管理会社はじめ他社の物件を紹介し、成約に結びつけようと努力する。わざわざ来店くださったお客様が大事だからだ。

では店舗兼業型管理会社も、PM専業型と同じように広告料(AD)を他店に出して、お客様に紹介いただくようにすればいいではないか?と思われる方もいるかと思う。
しかし、そうする店舗兼業型管理会社は皆無とは言わないが、実際はあまりない。
なぜなら自社で成約すれば、オーナーから1ヵ月、お客様から1ヵ月の合計2ヵ月分売上があるのに対し、他社で決められると、お客様からの仲介手数料は入ってこず、オーナーからの1ヵ月分も広告料(AD)として出すようなことがあれば、成約しても売上はゼロになってしまうからだ。
慈善事業ではないので、それをしようとは思わないだろう。
そのため、店舗兼業型管理会社に募集を依頼すると、広く情報は行き渡らないので、その会社と心中することになる。
コンセプト賃貸物件の募集の場合、これはかなり致命的だ。

> ポータルサイトとコンセプト賃貸物件との相性

ここまで読んで、「いやいや、今はネットの時代。お部屋探しをしているお客様はHOME’SやSUUMOなどのポータルサイトで物件を選んで、それから来店するのだから、PM専業型だろうが店舗兼業型だろうが、情報が行き渡るという意味では変わらないのではないか」と思われた方もいるかもしれない。
しかし残念なことにそうではない。
なぜなら、ポータルサイトでコンセプト賃貸物件を探すのが困難だからだ。
その理由は簡単で、ポータルサイトにはコンセプトを検索する項目がないのである。
どういうことかと言うと、たとえば「ウサギを飼育できる賃貸住宅」というコンセプトの物件を探しているとする。
ここでポータルサイトを利用すると、はじめにエリアや家賃などの条件を入れたあと、「ペット相談可」などのフラグにチェックを入れて探し始めることになるが、「ペット相談可」というのはたいがい「小型犬可」を指していて、大型犬やネコなどでもNGということが多い。
フリーワードで「ウサギ」と入力し、検索をかけることもできるがなかなかヒットしないだろう。
そのためやむを得ず、「ペット相談可」となっている物件ひとつひとつに問合せをかけていくことになる。それがどれだけの労力を要するか、容易に想像できると思う。

ポータルサイトではなく、ユニーク物件を紹介するサイトで探すという方法もあるにはある。
たとえば「ペット飼育可」物件ばかりを集めた募集サイトだ。
ただ、そうしたサイトの実態は仲介店舗であることが多く、それらは管理会社側から広告料(AD)をもらえる物件を優先的に掲載する傾向がある。
仮に広告料(AD)をもらえなくても、良い物件であれば掲載する、というサイトがあったとしても、ウサギを飼育できる物件が掲載されていることは稀だろう。
よって、現段階では、仲介店舗の営業マンに「ウサギを飼育できる部屋」であることを知っていただき、その営業マンを介してお役様に紹介してもらう、という方法が最も有効なのである。

> コンセプト賃貸物件はネット時代の申し子

ところで、コンセプト賃貸物件の場合、募集情報をお客様に届ける手段がもうひとつある。
それはホームページやSNSを上手に活用する方法である。
普通の物件の場合、オーナーが物件専用のホームページを開設し、FacebookやYouTubeなどを使って紹介しても、知り合い以外にはなかなか見てもらえない。
しかしユニークなコンセプトを持った物件ならば、そのコンセプトに関心がある方に見てもらえる可能性が高まる。
たとえば、私のクライアントで「アクアハウス」という物件をつくり続けているオーナーがいる。これは「水槽をたくさん並べて、熱帯魚や爬虫類などを思う存分飼育できる賃貸住宅」というコンセプトでプロデュースされている物件なのだが、そのオーナーはアクアハウスを紹介するための専用サイトを設け、モデルハウスをつくってそこでたくさんの生き物を飼育され、その様子をYouTubeチャンネルやTwitterで紹介し続けている。
そしてたまに、現在建築中のアクアハウス情報を載せると、「自分も住んでみたい」というコメントが寄せてこられる。
新築中なので、まだ成約はしていないけれど、この方法が機能するようになれば、仲介店舗の力を借りなくても決まる可能性がある。
実際、楽器演奏が思い切り楽しめる物件などを展開しているオーナーなどが、この方法で直接契約しているケースもあるので、今後ますます注目されていく募集方法になると思う。
コンセプト賃貸物件はまさに「ネット時代の申し子」だ。

> まとめ~コンセプト賃貸物件には特有の募集方法があります

それでは本日のまとめです。

  • 賃貸管理会社には「店舗兼業型」と「PM専業型」の2種類(タイプ)があり、それぞれ入居者募集(リーシング)方法が異なる。
    「店舗兼業型」は自社に来店されたお客様に物件を紹介し、「PM専業型」は「店舗兼業型」をはじめとする仲介店舗にお客様付けを依頼している。
  • 「店舗兼業型」のうち、地域密着タイプで1店舗のみという会社はコンセプト賃貸物件の募集には向いていない。なぜならコンセプト賃貸物件を探している方はエリアを限定していないことが多いからだ。
  • 多店舗展開している「店舗兼業型」も、コンセプト賃貸物件の募集には弱い。コンセプト賃貸物件はお客様がどの店舗に行っても紹介を受けられるという体制を敷くことが重要だ。
  • 「PM専業型」管理会社は、通常レインズ、マイソクなどを活用して、仲介店舗に情報を届ける募集スタイルをとっているので、コンセプト賃貸物件の募集に合うことが多い。
    「店舗兼業型」も多くの仲介店舗に情報を届けることは可能だが、売上の構造上、そうはしてくれない可能性が高い。
  • ポータルサイトとコンセプト賃貸物件は相性が良くない。それはコンセプトにフィットする検索項目がポータルサイトにはないからだ。
  • コンセプト賃貸物件は専用ホームページやSNSなどのネットを駆使して、コンセプトのターゲットとしているお客様に募集情報を直接届けることができる可能性を多分に秘めている。

コンセプト賃貸物件の募集情報を、ターゲットとなるお客様に届ける手段は、「仲介店舗」に助力いただく方法と、ネットを使って直接アプローチする方法とがあります。
前者は既存の募集システムを上手に活用するもので、後者は全く新しいスタイルを開発するものです。
いずれにしても、既存のシステム(仲介店舗に助力いただいたり、ポータルサイトで検索いただいたりするシステム)を、普通の物件と同じように活用しようとしても、なかなかうまくいきません。
エッジの効いたコンセプト賃貸物件をつくられているのに、リーシングで苦戦する方が多いのは、このことをよく理解していないからだと私は思っています。
孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百戦殆からず」というものがありますが、まずは既存のシステムのことをよく学んでいただくところから始めていただきたいです。
そのうえで、ネットを活用した新しいリーシング手法づくりに取り組んでいただきたい。
どちらも奥が深いので、専門家の力も上手に借りて、コンセプト賃貸物件プロデュースで成功を収めてほしいと願っています。

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