コンセプトエール

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失敗しがちなコンセプト賃貸の賃料設定

投稿日:2019年5月1日 更新日:

苦労してプロデュースしたコンセプト賃貸物件なのに、入居者がなかなか決まらず悩んでしまわれるオーナーが少なくありません。
空室が長引く理由はいくつもあって、過去のコラムでは「ターゲットのニーズを把握できていないこと」、「コンセプト賃貸特有の募集方法があるのを知らないこと」などを説明してきましたが、賃料設定が明らかに誤っていると思われるケースも散見されます。
そこで今回はコンセプト賃貸の賃料設定に焦点を当て、詳しく解説いたします。

> 賃料はどのように決まっているか

はじめに一般の賃貸物件の賃料がどのように決まることが多いか、簡単に説明してみよう。
オーナーが仲介店舗を回り、「うちの物件の賃料はどれぐらいが適当ですかね?」と訊ねると、営業マンは駅からの距離、面積、間取り、築年数などを確認したのち「相場からして○○円ぐらいじゃないでしょうか」と答えていることが多いのではないかと思う。
街によってだいたいの「相場」があると言い、それに照らして「この物件だったらいくらぐらいで決まりそう」と回答する。
そして多くの場合、高めに言って決まらないと責任を追及されるかもしれず、高いと自分が決めることも難しくなるので、「相場」よりやや低めの金額を言う。そんな感じじゃないかと思う。

また、査定を依頼された側の思惑で賃料査定が左右されることもある。
ひとつ例をあげよう。
以前渋谷区で新築のコンサルティングをしていたとき、オーナーが融資相談をしている都市銀行に私の提出した査定賃料が妥当かどうか訊ねたことがあった。
すると融資担当者は物件の最寄り駅にあるマンションの空室情報を一覧にしてきて、「これらの平均と比較すると、坪あたり2,000円以上高いと思います」と言われた。
あまりの差に不安になったオーナーが「本当に久保田さんが言われる賃料で決まるのでしょうか?」と疑問を投げかけてきたので、都市銀行が提示してきた資料を見せてもらったら、こちらが愕然とした。
新築物件は「駅徒歩4分の立地」「約30㎡の1K」「重量鉄骨造」というプランだったのだが、都市銀行のデータは「駅徒歩15分以内」「築年数問わず」「構造問わず」「専有面積問わず」という検索条件で検索された空室の一覧だったからだ。
そこでオーナーに「駅徒歩15分の物件と駅徒歩4分の物件はどちらが高いですか?」、「築30年の木造アパートと新築の重量鉄骨造マンションはどちらが高いですか?」、「80㎡の部屋と30㎡の部屋の坪単価はどちらが高いと思いますか?」と訊ねたら、「ああ、そういうことですね」と私の言わんとしていることを理解くださった。
思うに、このオーナーは属性が高い方だったので、都市銀行は、私の企画を潰し、オーナーにもっと多額の金額を借りてもらいたかったのだろう(実際、都心のオフィスビルを何棟も勧めてこられた)。
ほかにもサブリース会社の賃料査定は、自社が余裕を持って満室にできる賃料を言うから安くなりがちだったりするなど、査定する側の思惑で賃料はかなり違ってくる。しかし「絶対の正解」はないのだから、「嘘つきだ」と非難することもできない。
要は「こういうこともある」とオーナー側が知っておくべきだということだ。

> 望ましい賃料査定の在り方

では、どういう賃料査定が望ましいと言えるのだろうか?
「絶対の正解はない」という前提のもと、私がお薦めしているのは、競合物件(ベンチマーク)を複数選定し、それらと「スペック」を比較する方法だ。
たとえばエアコンというスペックに注目し、自分の物件のライバルとなりそうな物件にはエアコンがあるが、自分の物件にはエアコンがないとしたら、いくら賃料に差がつくか検討する。ライバルが8万円なら、自分の物件は79,000円かな、などと考える。
スペックには築年数、駅からの距離、周辺環境、構造、間取り、専有面積、階数、部屋の向き、設備、敷金・礼金など数多くの項目がある。
私の会社では50項目以上に分け、自分の物件とライバル物件とで比較を行っている。
そしてライバル物件がまずまずのスピードで〇〇円で決まっているから、自分の物件はいくらぐらいだろうと検討をつける。項目によりいくらぐらい差がつくのかは「勘」頼りになるが、複数の担当者と議論を重ね、経験を積んでいくと、差の感覚は狂いがなくなってくる。
この方法で査定すると、「相場」というものがいかにいいかげんなものなのかわかってくる。パソコンだって車だって、ほとんどの商品はスペックが違えば価格が違うのに、スペックに注目しないで賃料を決める不動産業界がおかしいのだ。
ところで余談だが、入居者さんにアンケートを取った「人気の設備ランキング」がよく発表されていて、このなかで「この設備(サービス)がつくなら賃料はいくら上がってもいい」というデータが示されていることがある。
スペックを比較し、金額を考えるとき、そのデータを参考にしようとされる方が時々いるが、それはあまり意味がないと言っておこう。
なぜなら借りる立場の方々は高い金額を言うはずがないからだ。
エアコンをつけてくれたら本当は賃料が2,000円高くてもいいと思っていたとしても、「500円」ぐらいだと言っているはずだ。
思惑が違えば違う査定金額が出てくるというのは、ここでも同じことなのである。

> コンセプト賃貸の賃料設定は難しい

ではコンセプト賃貸は、普通の物件と同じくスペック比較で賃料査定ができるだろうか?
答えは「Yes」でもあり「No」でもある。
コンセプト賃貸と言えど、ほとんどのスペックは普通の物件と共通するので、コンセプト以外の項目が近い競合物件を探し比較することができる。
しかし、肝心のコンセプトについてはレアであることが多いから、いくら差をつけられるのかわからない。
たとえば「地下に音楽スタジオがついていて入居者さんは24時間使い放題」というコンセプト物件があるが、そのコンセプトがいくら賃料を押し上げるかわからない。「毎月のスタジオ代が浮く分を上げられるんじゃない?」という意見があるが、スタジオ代はバンドメンバーで割り勘することが多いだろうから、いくらが「浮く分」と言えるのか、即答はできないだろう。
だが、全く同じスペックの物件が2棟並んでいて、そのうちの1棟には音楽スタジオがあったとしたら、そのほうが賃料は高いはずというのは誰にもわかることと思う。
普通の物件は多くの物件と競争しなければならないが、音楽スタジオ付きのマンションはミュージシャンや、音楽好きの人にはたまらない魅力があるはずで、バンド仲間と同じマンションで暮らし、夜中でもいいメロディが浮かんだらすぐにスタジオに行って演奏できる。
成功したミュージシャンなら自宅にスタジオを持てるが、まだその域には到底達していない自分がそうした憧れの生活を実現できる。
その方たちにとっては「プライスレス」の世界の物件だと言えるだろう。
問題は、「ではいくら高くしても大丈夫か?」という点に尽きる。
このことを考えるとき、いつも思い出されるのは、日清食品の創業者・安藤百福さんがカップヌードルを発明したとき、「100円」に価格設定した話だ。
カップヌードルが発売されたのは1971年のことで、当時、袋入りのインスタントラーメンの価格が25円~35円だったそうである。
その3~4倍の金額設定をしたものだから、周囲は「売れるはずがない」と猛反対したそうで、実際なかなか売れずにいたらしい。
しかし安藤さんは「調理器具と食器も兼ねたお手軽さ」というコンセプトに絶対の自信を持ち、袋入りインスタントラーメンと比較することに意味はないとされた。
そして野球場や遊園地、警察署や消防署などで売り始め、歩行者天国で宣伝するなどのキャンペーンを行うなど、全く新しい販売方法を考案し、100円で売れることを実証された。
安藤さんが何故「100円」に固執されたのかはよく知らないけれど、おそらく袋入りインスタントラーメンをベンチマークにせず、他の食品や料理などに着目し、100円で売れると判断されたのだと思う。
コンセプト賃貸の賃料設定には、このエピソードが参考になると私は考えている。

> コストをかけすぎるコンセプト賃貸

もちろん、どんなに稀少性があるコンセプトであっても、賃料が青天井というわけではない。人が暮らす場所であるから、通勤・通学や買い物の便などの要素も加わるので、限界はあるはずだが、時々、その限界を大幅に超えてしまっているコンセプト賃貸に出会う。オーナーの想いが強すぎて、超強気の金額設定をしてしまうのかもしれないが、どうしてもその賃料にしなければならない事情がある場合もある。
たとえばコストをかけすぎてしまった場合だ。
道楽でつくったコンセプト賃貸ならいざ知らず、多くは不動産投資でつくった物件なので、かけたコストは賃料で回収していくことになる。
たとえば20室あるマンションで、コンセプト部分に4800万円投じたとしよう。この金額を10年で回収しようとしたら(利回りは10%ということになる)、月額の家賃は2万円高くしなければならないことになる。
こういうオーナー側の事情でもって、賃料を高く設定した場合、それでも問題なく決まることがあるかもしれないが、なかなかそうはいかない。
コンセプトによる上がり幅がいくらなのか読み切れないから、「高く決まるといいな」という欲が先に立ち、コンセプトづくりに相当なコストを注ぎ込んでしまう。
これはありがちな失敗だ。
扱う商品がカップラーメンのように大量生産・大量販売ができるものなら、宣伝やマーケット開拓にかけるコストを増やすことができるけれど、賃貸住宅はそうではないので、宣伝等にかけられる費用にも限りがある。
賃料のUP幅を読み切ることは難しいが、それでも読む努力はする必要がある。
ひとつ方法があるとしたら、どういう人が借りてくれるか、できるだけ詳細に想定し、その方の年収はどれぐらいだから、払える賃料の上限はこれぐらいだろうと割り出す手だ。
たとえば先述の音楽スタジオ付きの賃貸物件であれば、借りる人はまだプロミュージシャンではない「卵」が多いのではないかと想定し、その人たちの年収は240万円ぐらいかなと予想を立てる。この場合月収は20万円で、スタジオ代も考えて賃料は8万円ぐらいが精一杯だろう・・・などと考える。
これは単なる一例で、ミュージシャンの卵と言えどもいろんな層があるから、その中で年収の高い人・・・たとえば裕福な家の大学生をメインに考えたら、賃料は10万円を超えても問題ないかもしれない。
こんな具合に借りてくれる人から逆算して賃料を割り出すのは有効な方法だと思う。

> 経営戦略に沿った賃料設定をしよう

コンセプト賃貸の賃料設定には、ほかにも特有のノウハウがある。
ここでそのひとつひとつを紹介することは避けるが、ただ、どのノウハウを用いるかは経営戦略によると私は思う。
普通の物件であってもこれからの不動産投資は、単なる「投資」ではなく「経営」的視点がますます重要になっていくだろう。
コンセプト賃貸の場合は尚更「経営」的視点が重要になってくる。
そして「経営」には戦略が必要だ。
完成後、短期で売却してしまう場合と、長期保有する場合とでは、当然戦略が異なり、賃料設定も自ずと異なる。
また「経営」として考えたら、「売上」を「賃料収入」に限定する必要もないかもしれない。
こうしたことを意識せず、賃料設定を考えること自体、本来おかしなことだと思う。
この「おかしい」という感覚を共有できる方と多く出会い、議論を深めていけたらと思っている。

> まとめ~新しい市場をつくりながら価格を決めるには工夫が必要です

それでは本日のまとめです。

  • 一般的な賃貸物件の賃料がどのように決まっているか、とりあえず知っておく必要はある。通常は「相場」から査定されていることが多い。
  • 査定をする人(仲介店舗、銀行の融資担当者、サブリース事業者など)の思惑で査定賃料はかなり違うものである。
  • 賃料の査定方法にはさまざまなものがあり、「絶対正解」というものはないが、ひとつのおススメは競合(ライバル)物件とスペック比較をする方法である。
  • コンセプト賃貸物件はスペック比較もできるが、肝心のコンセプトの部分は比較できないので、賃料設定はとても難しい。しかし競合がいないのだから、賃料が高くなることは間違いない。
  • カップラーメンを発明した日清食品の創業者・安藤百福さんの例から、一般の賃貸物件の「相場」にとらわれすぎることはよくないと思う。
  • コンセプトにコストをかけすぎたオーナーは、賃料を高くしてコスト(投資額)を回収しようとするが、それが常軌を逸してしまうことはよくある。
  • どういう方が借りてくださるか想定し、その方たちの年収などから賃料設定を考えるのはひとつの有効な方法である。
  • コンセプト賃貸のプロデュースやマネジメントは「経営」として考える必要がある。賃料設定は経営戦略を基点に考えるべきものである。

コンセプト賃貸物件の募集賃料をいくらに設定するかは、プロでも非常に難しい問題です。競合がないので高くすることはもちろんできますが、どこまで高くできるかは相当考えを巡らせる必要があります。
主に「相場」に基づく「勘」で賃料を考えている仲介業者さんなどからすると、コンセプト賃貸物件は「相場」からかけ離れすぎていて、お客様に紹介してもよいかどうか迷ってしまうかもしれません。
コンセプトの価値を理解できる人(=そのコンセプトを望んでいる人)からすると、「賃料はいくらだって構わない」と思うものかもしれませんが、そういう人たちと簡単に出会えないというのも、これまでのコラムで説明してきたことです。
また、そう思っていただけるレベルにするために、ニーズを的確につかむことも必要です。
こうして考えると、コンセプト賃貸のプロデュースやマネジメントはまさに「経営」そのものなのだと思います。そして従来のやり方はなかなか通じない世界でもあります。
このことをよく理解して、取り組んでいっていただきたいと思います。

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