コンセプトエール

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コンセプト賃貸独特のトラブル

投稿日:2019年4月29日 更新日:

前例のないコンセプトを設定した賃貸物件をプロデュースすると、全く予想しなかったトラブルに見舞われることがあります。
どんな分野であれ、新しいものをつくり出すときに新しいトラブルの発生は避けて通れないものですが、賃貸物件は入居者さんたちの生活の場ですから、できる限りご迷惑はおかけしたくないものです。
今回はコンセプト賃貸独特のトラブルを防止する方策について考察します。

> 思いもよらないトラブル発生

賃貸住宅管理業は「トラブル産業」とよく言われる。
人が生活する場を提供しているから、どうしてもトラブルはつきものだ。
育った環境や生活リズムの異なる人たちが同じ建物内で暮らすことによるトラブル、エアコンや給湯器をはじめ多種多様な設備故障によるトラブルなど、さまざまなトラブルの種があふれている。賃貸物件でトラブルがゼロということは考えられない。
その中にあって、コンセプト賃貸は経験したことがない新種のトラブルが発生しやすいから特に注意が必要だ。
過去に例がない賃貸物件をプロデュースするときは尚更である。

私も何度か予期せぬトラブルに見舞われたことがある。
たとえば「ネコ共生型」をコンセプトにした賃貸物件をプロデュースしたときのこと。
専門家に「ネコは多頭数飼育したほうが精神的に安定し、鳴いたり、壁で爪をといだりしなくなる」と助言され、「最大5匹まで飼育可能」とうたって募集をした。
コンセプトが功を奏し、ネコ好きな方たちですぐに満室になったのだが、数カ月後、複数の入居者さんから「〇〇〇号室から異様な臭いがする」という連絡を受けた。
急ぎその部屋を訪問すると、驚いたことにその住人はネコを25匹も飼育していた。
その方は「多頭飼育崩壊」という心の病を患っておられたようで、野良猫を拾ってきては飼い始めるのだが、糞尿の始末などはほとんどせず、放置状態。
室内に入ると数分で吐き気と頭痛を催すほど悪臭を放っていたのだけれど、当の本人は平然と暮らしていた。鼻の感覚が完全に麻痺してしまっていたのだろう。
すぐさま「ネコは5匹までしか飼育できない契約ですので、それ以上のネコは何かしらの方法で即刻手離してほしい。それができなければ直ちに契約解除する」と伝えたところ、「手離すことは考えられない」と言われ、二週間後に退去された。
しかしネコと一緒に引っ越しいただいても、悪臭は部屋中に完全に染みついてしまっていて、新築にもかかわらず、浴槽と便器を除いてすべて解体してスケルトンにしなければならなかった。リフォーム費用も300万円近い金額となり、支払っていただけるか不安だったが、その方は仮想通貨で儲けておられ、あっさり全額支払ってくださった(「仮想通貨ならすぐに支払えます」と言われたが、換金時下落している可能性があるのでお断りした。受けていれば日本で初めて仮想通貨で退去費用を受け取った管理会社になっていたかもしれない)。
リフォーム費用を全額いただけたことは不幸中の幸いだったが、入居者さんによってはそうできなかった可能性もあり、今振り返ってもゾッとする。

このトラブルは「多頭飼育崩壊」という心の病の存在を知らなかったため、招いてしまったものだが、「ネコ共生型」というコンセプト賃貸を始めるにあたり、いろいろな専門家に企画に加わっていただいていたにもかかわらず、このトラブルの可能性には全く言及されなかった。
そのことを恨んでいるわけではない。どんなスペシャリストをチームに招き入れていてもパーフェクトということはなく、予期せぬトラブルは起こりうる、ということをお伝えしたかっただけである。

> 賃貸管理のプロの協力が必要

こうした予期せぬトラブルが生じやすいというのは、コンセプト賃貸プロデュースのリスクのひとつだ。ある意味、最大のリスクと言ってもいいかもしれない。
この予期せぬトラブルを防止するためには、専門家に相談し、独自の審査方法を考え、しっかりとしたルールをつくることが必要だ。
このとき賃貸管理の専門家である管理会社に主導してもらうべきだと私は考える。管理会社抜きでルールを考えると、借地借家法や民法などの法規に適合しないルールをつくってしまう可能性があるからだ。
賃貸借契約の基本を知らず、賃貸にまつわるさまざまな法規も知らなければ、せっかくつくったルールも法的に認められないものとなってしまうかもしれない。
ルールが理想的でありすぎて、運用が難しいケースも出てくるだろう。管理の現場から見たら現実離れしているルールは、つくっても遵守させることができない。
ルール違反をしていないかどうかチェックしたり、発見したとき即座に対応したりするには、きちんとしたシステムが必要だ。
自主管理中心でやってこられたオーナーも、ことコンセプト賃貸をプロデュースする際には管理会社を運営チームに加えることをお勧めする。
予期せぬトラブルであったとしても、過去に発生した類似のトラブル解決事例から、予防策を講じたり、発生後即座に対処したりしてもらえることが期待できるためだ。

> 及び腰になりがちな管理会社

そうは言いつつ、管理を依頼しても管理会社のほうから断られてしまうケースも出てくるだろう。はっきりと断らないまでも、煮え切らない態度を続けられ、こちらから「もう結構です!」とあきらめてしまう場合もあるかもしれない。
管理会社にしても、前例のないことに取り組むのはリスキーだから、実は喜んで引き受けたくないという気持ちがある。
そうでなくてもスタッフ不足で多忙を極めているところが多く、ルーティンワークをこなすだけで精いっぱいだから、新しい取り組みに及び腰になるのも無理からぬことなのである。

筆者も15年ほど前、「ペット飼育歓迎」というコンセプト賃貸の管理を断った経験がある。
このときは今ほど「ペット飼育可」が普及しておらず、ごくわずかな会社のみが「ペット賃貸」を積極的に受け入れ、新しいサービスを打ち出していた。
マネジャーの私も及び腰だったが、スタッフたちが「絶対無理です!」と熱く訴えてくるので、管理依頼をしてくださったオーナーにお断りし、代わりにペット賃貸を得意とする会社を2社紹介し、管理受託コンペを開いてさしあげた。
それはそれで喜ばれたが、新しい分野に積極的に取り組まなかったことは苦い思い出だ。
自分自身がそうだったから、未開のコンセプト賃貸の管理に二の足を踏む管理会社の気持ちがよくわかる。
消極的になるのが普通だとも思うので、新しいことに前向きに取り組もうとする管理会社を見つけることは簡単なことではないかもしれない。
そうであっても、賃貸管理の知識武装なしにコンセプト賃貸に取り組むことは避けてほしいので、いろいろなつてを頼りに、未体験分野でも積極的に取り組んでくれる管理会社は是非探し出してほしい。

> 厳しすぎるルールが招く結果

トラブルに見舞われることを極度に恐れ、ルールを厳格化したいと考えるオーナーや管理会社は非常に多い。極めて自然なことだと思うが、ルールを厳しくしすぎるのは考えものだ。
何故なら、ルールを守って暮らさねばならない入居者さんにとっては不自由な話だからだ。
もちろんある程度のルールはあったほうが入居者さんも安心する。何を守って暮らせばいいかの目安になるし、他の入居者さんから受けるだろう迷惑も最小限にとどめてもらえると思うからだ。
しかし厳しすぎると息が詰まる。
家庭生活でもそうだろう。門限や家事分担などが細かく決められていて、「あれをしてはダメ」「これをしてもダメ」と禁止事項が多すぎたら、しんどすぎて逃げ出したくなる。

一方、ルールが甘すぎると、トラブルは思うように防止できず、さらに発生したときのペナルティがゆるかったりしたら、「守らなくても大丈夫」と入居者さんは考えるようになる可能性が高い。
そうすると、きちんと守る人と守らない人との差が目立ってくる。
この状態を我慢できず退去するのは、ルールをきちんと守る人の方である。
守らない人は「うるさい奴がいなくなってせいせいした」と喜び、甘すぎたルールさえ形骸化していくようになる。

ルールはどこまで厳格に定めたらいいか、そのさじ加減はとても難しい。
難しすぎて途方に暮れてしまうオーナーもいらっしゃるだろうが、ひとつ良い方法がある。それは「入居者さんたちと一緒にルールをつくっていく」という方法だ。
まずは誰もが守れる範囲の簡単なルールを決めておき、生活が始まったら入居者さんたちの意見を聞きながら、より具体的なルールを決めていくのである。
話し合いの場を持ってもいいし、SNSやメールで意見交換をするのでもいい。
大事なことは「入居者さんたちにルールづくりに参加してもらうこと」である。
厳しさの強弱の度合いを確かめられるという長所があるほか、入居者さんたちにとっては「自分たちがつくったルール」だから、守っていこうという気持ちが高まるという利点もある。
実際に生活をしているなかで困っていることを聞ける機会にもなる。
ルールは入居者さんたちと一緒につくっていく。これはひとつの良策だと思う。

> 入居者さんと一緒にコンセプト賃貸を育てていこう

入居者さんと一緒にルールづくりを話し合えるようになったら、コンセプト賃貸の運営は成功したも同然である。
トラブル防止や解決策を産み出すヒントをたくさん得られるだろうし、これからサービスを強化していくうえで貴重な意見をいただけるようにもなるだろうから。
「ピンチをチャンスに変える」というのはどんな分野でも大事なことだと思うが、賃貸経営にとって「ピンチ」である「トラブル」を、より良いコンセプト賃貸に育てていく「チャンス」に変えることができたなら、そんな素晴らしいことはない。
入居者さんは、オーナーにとって大事なお客様であるが、それだけにとどまらず共同のプロデューサー、ビジネスパートナーのようになっていただけたら、どんなにか良いだろう。
入居者さん、オーナー、管理会社が一体となってより良いコンセプト賃貸に育てていく。理想的でありすぎるかもしれないが、目指すだけならタダだ(笑)。
せっかくコンセプト賃貸づくりを志されたのなら、理想に向かってまっすぐ進んでいただきたい。

> まとめ~コンセプト賃貸はつくってからがスタートです

それでは今回のコラムのまとめです。

  • コンセプト賃貸は、コンセプトの専門家に企画チームに加わっていただいていたとしても、予期せぬ新しいトラブルが発生するものである。
  • 予期せぬトラブルを防止するために、専門家に相談し、独自の審査方法を考え、しっかりとしたルールをつくることが重要である。
  • ルールを考えるとき、賃貸管理会社も加わってもらうべきである。賃貸管理や法規に関する知識抜きでルールをつくると不備が多くて苦労してしまう可能性が高い。
  • 管理会社は前例のないコンセプト賃貸の管理に及び腰になりがち。新しいことに積極的に取り組む姿勢のある管理会社を探そう。
  • ルールづくりは厳しさのさじ加減がとても難しい。厳し過ぎれば入居してもらえないし、甘すぎれば不良入居者ばかりになる。
  • ルールづくりのひとつのコツは、入居者さんと一緒にルールをつくっていくことである。
  • コンセプト賃貸の入居者さんが共同プロデューサー、ビジネスパートナーのようになってくれたら、成功したも同然である。

賃貸経営はただでさえトラブルが多くて大変なのに、コンセプト賃貸は誰もが経験したことのないような新たなトラブルに見舞われる可能性があります。
それを怖がって、コンセプト賃貸に取り組むべきか悩んでしまうオーナーも多いでしょう。
差別化を図るというのは口で言うほど簡単なことではありません。
しかし一歩先んじてコンセプト賃貸で成功できれば、先駆者利益が得られることも確かです。
その成功の過程で見舞われるトラブルにめげることなく、解決策や予防策を産み出していくことで、物件の力は強固なものになっていきます。
そして、おそらくは、新たなトラブルが怖くてコンセプト賃貸に取り組めないオーナーは、取り組んだあとのトラブルでもすぐに弱音を吐いて撤退してしまう可能性が高いのです。つまりいつまでも「ひとり勝ち」の状態を続けることができるかもしれない、ということです。
トラブルを怖れず、成功のヒントをいただけたと受け止め、専門家、管理会社、入居者さんたちの力を借りて、コンセプト賃貸を一緒に育てていく。そんな気構えで取り組んでくださるオーナーがひとりでも多く増えていくことを願ってやみません。

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